「自己破産するから払えない」という脅しは法的に100%不発に終わる

事例・体験談など

追い詰められた不払い義務者が、苦しまぎれに「これ以上攻めるなら自己破産する。そうなったら養育費も1円も払わなくなるぞ」と脅してくるケースがあります。

これは法律知識のない人間をターゲットにした、古典的なハッタリ(あるいは無知による勘違い)に過ぎません。

  • 養育費は「非免責債権」である
    • 破産法(第253条1項4号)により、子どもの養育費や扶養義務に基づく権利は「非免責債権(ひめんせきさいけん)」に指定されています。
    • つまり、相手が裁判所に申し立てて自己破産が認められ、消費者金融の借金や車のローンがすべて帳消し(免責)になったとしても、養育費の支払義務だけは1ミリも消えずにそのまま残ります。
  • むしろ破産後は「回収のゴールデンタイム」になる
    • 自己破産した相手は、他のすべての借金から解放されています。信販会社や銀行からの督促がピタッと止まるため、相手の手元には「自由に使える給与(手取り)」が残ることになります。
    • 他の債権者が誰も手を出せなくなったその給与に対して、あなただけが「唯一の債権者」として堂々と差し押さえを続行できるため、むしろ不払い分の回収確率は跳ね上がります。

「18歳成人」の落とし穴を回避する期間設定の技術

民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられたことで、新たなトラブルが多発しています。離婚時に「子が成人に達するまで支払う」とだけ書いていると、相手から「18歳になったから今月から打ち切る」と主張されるリスクがあります。

実務においては、この「言葉の定義の隙間」を完全に埋めておく必要があります。

  • 「成人」ではなく「具体的な年齢」か「卒業」で縛る
    • 書類を作成する際は、「成人に達するまで」という曖昧な表現は絶対に避け、「満22歳に達した後の最初の3月まで(=大学卒業を想定)」、あるいは高卒就職を想定する場合でも「満20歳に達する月まで」と、明確な年齢や基準を数値で指定します。
  • 大学進学率の現実をデータで突きつける
    • 「18歳以降は自分で稼げるはずだ」という相手の言い分に対しては、現代の進学率データ(4年制大学への進学率が約55%を超えている現状)をベースに、「進学した場合は学費だけでなく生活維持費が継続して発生する」という前提で調停や協議を進めます。
    • あらかじめ「大学等へ進学した場合は、その在学期間中も養育費の支払いを継続する」という但し書き(特約)を確定させておくことが、長期的な不払いを防ぐ防衛策となります。

💡 コラムの総括:理不尽を看過しない「リーガル・リテラシー」

相手が吐き出す「破産する」「もう18歳だから法律上払わなくていい」といった言葉は、すべてこちらの戦意を喪失させるための「偽の煙幕」です。

実務と法律のシステムは、私たちが考えている以上にドライで、かつ「子どもの生存権」を最優先に守るように設計されています。

知識は最大の防衛拠点である。 相手のハッタリに一喜一憂し、感情をすり減らす必要はどこにもありません。相手がどれほど巧妙な嘘や屁理屈を並べ立てようとも、「法律の条文と手続き」という現実の前に、それらはすべて無力化されます。正しい知識という武器を手に、淡々と、毅然と、システムを執行していきましょう。