裁判所からの「最後通牒」を活用する
強制執行や間接強制は非常に強力ですが、弁護士費用や印紙代などのコストがかかります。これに対し、家庭裁判所の調停や審判で決まった内容を、費用をかけずに守らせる仕組みが「履行勧告」と「履行命令」です。
第7回では、裁判所の権威を背景とした、手軽かつ効果的な督促システムを解説します。
1. 履行勧告:費用ゼロで行える公的な督促
家庭裁判所での調停や審判で決まった支払いが行われない場合、裁判所に対して「履行勧告」を申し立てることができます。
・手続きの簡便さ 電話や書面、あるいは直接窓口へ行くだけで申し立てが可能で、手数料(印紙代)は一切かかりません。
・裁判所による調査と説得 申し立てを受けた裁判所は、相手方に対して「なぜ払わないのか」を調査し、正当な理由がなければ「早く払いなさい」と勧告(説得)してくれます。裁判所から直接連絡が来ることは、心理的に大きな圧力となります。
2. 履行命令:さらに一歩踏み込んだ強制力
履行勧告に従わない場合、次のステップとして「履行命令」を申し立てることができます。
・決定による支払い命令 裁判所が相当と認めた場合、期限を定めて支払いを命じます。これは勧告よりも強い「命令」としての位置づけになります。
・過料による制裁 履行命令に従わなかった場合、10万円以下の「過料」を科すことができます。これは前科にはなりませんが、国に対する制裁金として支払わせるものであり、相手に対する強力な警告になります。
3. 制度のメリットと限界
これらの制度は、強制執行に踏み切る前の「ジャブ」として非常に有効です。
・メリット 費用がかからないことに加え、裁判所が間に入ることで、相手が「隠し通せる」「無視しても大丈夫だ」という安易な考えを捨て、真面目に支払いを再開するきっかけになります。
・限界 ただし、この制度自体に「口座から現金を抜き取る」ような直接的な強制力はありません。相手が過料を払ってでも無視し続けるような強硬な姿勢である場合は、速やかに強制執行へ切り替える必要があります。
4. 実行のタイミング
履行勧告は、不払いが始まった初期段階で活用するのが最も効果的です。
・早い段階での楔(くさび) 「1回くらい遅れても大丈夫だろう」という相手の甘えを、裁判所の名前が入った封筒一つで打ち砕くことができます。ここで解決すれば、高額な弁護士費用をかけて強制執行をする必要もなくなります。
制度のツボ
履行勧告や履行命令は、いわば裁判所という「審判」からの公式なイエローカードです。
直接的な財産の奪還には至りませんが、相手に対して「逃げ場はないこと」を公的に認識させ、強制執行という「レッドカード」を出す前の最終的な警告として機能します。

