第7回:「公正証書がない」――過去の自分を悔やむ必要はない
「離婚するとき、バタバタしていて口約束だけで済ませてしまったんです……」 「ちゃんとした書類がないから、もう一円も請求できないんですよね?」
相談に来られる方の多くが、申し訳なさそうにそう口にされます。離婚時は心身ともに疲弊しており、一刻も早く縁を切りたいという思いから、詳細な書面(公正証書など)を作成せずに別れてしまうケースは珍しくありません。
第7回では、「書面がない」という絶望から、弁護士がどのようにして法的な権利を再構築していくのかを描きます。
1. 過去の自分を責める必要はない
まず知っていただきたいのは、公正証書がなくても「養育費を受け取る権利」は消えていないということです。 公正証書はあくまで「差し押さえをスムーズにするための道具」の一つに過ぎません。道具がないのであれば、弁護士と共に今から作り直せばよいのです。過去に書類を作らなかったことを「自分の落ち度」だと悔やむ時間は、もう終わりにしましょう。
2. 弁護士が「ゼロから証拠を積み上げる」ステップ
書面がない状態に対し、弁護士は以下のようなプロセスで「支払い義務」を確定させます。
- 調停の申し立て: 家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てます。これにより、たとえ相手が「そんな約束はしていない」と逃げても、裁判所という公的な場で話し合いを強制できます。
- 「算定表」による金額決定: 過去の口約束がいくらであれ、裁判所では双方の収入に基づいた「適正額」が算出されます。弁護士は相手の収入を厳格に調査し、子どもの生活に見合った金額を主張します。
- 調停調書の作成: 合意に至れば、裁判所が「調停調書」を作成します。これは公正証書と同等、あるいはそれ以上の強力な法的効力を持ち、次回の不払い時には即座に強制執行が可能になります。
3. 「被害者の声」:Iさんのケース
「離婚して5年。書面がないことを理由に、元夫からは『払う義務はない』と馬鹿にされてきました」と語るIさん。 弁護士が介入し、即座に調停を申し立てたところ、元夫は当初「証拠を出せ」と強気な態度でした。しかし、弁護士が法的な支払い義務を論理的に説明し、裁判所の審判(裁判官による決定)も辞さない構えを見せると、相手は態度を一変。最終的に、今後の支払いを約束する調停調書が作成されました。 「『書類がないから無理』と決めつけていたのは私自身でした。先生が『今から作ればいいんですよ』と笑ってくれたとき、本当に救われました」
4. 「今」動き出すことが、最大の対策
養育費は、原則として「請求(調停申し立てなど)した時点」までしか遡って請求できません。書面がないことを理由に何年も悩んでいる間に、本来受け取れたはずの権利が消滅してしまいます。 弁護士は、あなたの「後悔」を「行動」に変え、お子さんの未来を守るための法的武器を最短距離で手配します。

