「退職金」や「厚生年金」すら逃がさない将来価値のホールド

養育費回収事例集

相手が「会社を定年退職したから、もう給与はない」「これからは年金暮らしだから払えない」と言い出すケースや、逆に「まとまった退職金が入るから、それを最後に一気に逃げ切ろう」と画策するケースです。

実務においては、これらの「将来確実に発生するまとまった金銭(債権)」も、事前にロックをかけることが可能です。

  • 「退職金」の事前差し押さえ
    • 相手がまだ退職していなくても、近い将来(数年以内など)に退職することが確実である場合、「将来支払われる予定の退職金」を先回りして差し押さえることが可能です。
    • 通常の借金であれば退職金の $1/4$ までしか差し押さえられませんが、養育費の特権を使えば「手取り額の $1/2$」まで一気に差し押さえることができます。会社側も裁判所からの命令を無視できないため、退職金が相手の手に渡る前に、あなたの口座へ直接振り込ませることができます。
  • 「年金」の差し押さえ
    • 相手が受給している老齢年金(厚生年金など)も、法律上「差し押さえが禁止されている財産(差押禁止債権)」の一部ではありますが、養育費の請求においては例外的に差し押さえ(その給付額の一定割合)が認められています。「年金暮らしだから」という言い訳は、法的には通用しません。

最終手段:民事から「刑事事件(懲役刑)」へ引きずり出す包囲網

どれだけ民事の手続き(差し押さえなど)を尽くしても、徹底的に無職を装ったり、あらゆる財産を他人に名義変更したりして逃げ回る、極めて悪質な不払い者が存在します。

これに対し、現在の司法は「民事(お金の取り合い)」の枠を超え、「刑事(犯罪者として処罰する)」という文字通りの一線を越えたペナルティを用意しています。

  • 「不退去罪」や「強制執行妨害目的財産損壊罪」の適用
    • 執行官が自宅に動産差し押さえに来た際に暴言を吐いて追い返したり、差し押さえを免れるために故意に自分の財産を隠したり、他人の名義に移したりする行為は、刑法第96条の2の「強制執行妨害目的財産損壊罪(3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、またはその両方)」に該当します。
  • 「子どもの生存権の侵害」としての刑事告訴の心理的効果
    • 実際に警察が動き、相手が「被疑者(容疑者)」として逮捕または書類送検される事態になれば、前科がつくリスクが生じます。どれだけ民事の判決を無視していた人間でも、「刑務所(懲役)に入るかもしれない」という現実的な恐怖に直面した瞬間、親族からお金を借りてでも一括で滞納分を支払ってくるケースがほとんどです。

💡 コラム全体の完全な結び:システムを制する者が、未来を制する

全8回にわたり、初期の公正証書作成から、資産隠しのあぶり出し、転職・自己破産・海外逃亡の無効化、ペーパーカンパニーやデジタル資産の追跡、そして退職金・年金のホールド、最終的な刑事告訴に至るまで、ありとあらゆる「逃げ道」を更地にする実務戦術を網羅してきました。

養育費不払いという理不尽に対して、あなたが「システムを執行する」という意思を持ち続ける限り、現代の法制度と実務の設計は、必ずその逃げ道を塞ぎます。

相手がどれほど知的な屁理屈(ディベート)をこねようが、どんなに巧妙に姿をくらまそうが、すべてをノイズとして切り捨て、用意されたロードマップを淡々と進めてください。あなたのその毅然とした一歩が、子どもとあなたのこれからの人生に、確固たる平穏と正当な権利をもたらす最大の盾となります。