不払い者が最も多用し、かつ強力な盾となる言葉―それが「今、お金がない」です。この言葉を突きつけられると、多くの親は「ない袖は振れない」と戦う意欲を削がれてしまいます。しかし、法的な視点で見れば、この言葉のほとんどは単なる「優先順位の放棄」に過ぎません。第1回では、この嘘をどう突き崩すかを解説します。
1. 「原資」は相手の財布ではなく、勤務先にある
相手が「お金がない」と言うとき、それは「自分の自由にできる金がない」という意味です。それならば、その自由を奪えばいいのです。 養育費の差し押さえは、一般の債権(借金など)よりも法的に強力に保護されており、相手の給与(手取り額)の最大2分の1まで直接回収することが可能です。相手の財布を経由せず、勤務先の企業からあなたの口座へ直接振り込ませる「給与差し押さえ」を実行すれば、相手がいくら「ない」と叫ぼうが関係ありません。
2. SNSという名の「自白装置」
「生活が苦しい」と嘆く一方で、SNSでゴルフ、旅行、高級車、あるいは贅沢な食事を投稿している不払い者は驚くほど多いものです。 「SNSは嘘(見栄)かもしれない」という懸念もありますが、裁判所ではむしろ強力な武器になります。相手が「無一文だ」と主張した直後にこれらの証拠を突きつければ、相手は「虚偽陳述(嘘の証言)」の疑いをかけられます。さらに、2020年の法改正により、財産開示で嘘をつけば懲役刑を含む刑事罰の対象となるため、SNSの投稿は相手の安易な嘘を封じる「首を絞める縄」になるのです。
3. 「ない」と言われたら「出せ」と言う技術
相手が頑なに拒むなら、法的手段で「全資産のリスト」を強制的に提出させます。
- 財産開示手続: 裁判所に呼び出し、預貯金や不動産を白状させる。
- 第三者からの情報取得: 市役所や年金機構から、隠している「勤務先」を特定する。
- 銀行への一括照会: 全国の本店に対し、隠し口座の有無を照会する。
「ない」という言葉を鵜呑みにせず、国家の権限を使って「本当にないのか、法廷で証明せよ」と突き返す。この姿勢こそが、嘘を完封する第一歩です。
コラムのツボ:感情を捨てて「システム」を回す
不払い者との交渉で最大のタブーは、「どうしてお金がないの?」と相手の事情を聞いてしまうことです。理由を聞けば、相手はもっともらしい嘘を重ね、あなたを疲弊させるだけです。
「お金がない」という言葉を聞いた瞬間に、あなたはこう考えるべきです。 「ああ、言葉での解決は終わった。これからは手続きのフェーズだ」 相手を説得しようとするのをやめ、粛々と「給与差し押さえ」の準備を始める。その冷徹なまでのスピード感こそが、子どもの権利を守り抜くための最大の武器となります。

